『ネコは研究材料だからね』
 
最初の頃に言われた、冗談めいたその言葉。
それが今、頭の中でものすごくリアルに私の肩を叩く。

目の前にモヤがかかったような、心にも濁った水が流れこんできたような、そんな言いようのない虚しさと失望が一挙に襲ってきた。

“薬”? 
“飴玉”?
 
頭の中で、ウソツキさんがチョコレートを差しだしながら笑う。

『はい。精神安定剤入り』

「…………」
 
“暗示”? 
そうなの? 
そうだったの?

「なんだ……」
 
謎が解けたからって、ウソツキさんの正体が解ったからって、結局、私は期待しちゃいけなかったんだ、最初から。

「そうだったんだ……」
 
初めて会った、あの時から……。