「詩春(シハル)は優しいから、いつもそういうの気づいてくれるね」
 その言葉を聞いて、私はようやく自分のすべきことをやり終えたかのような、小さな達成感を抱くのだ。
 彼女の頭の上に見える数字と、触れた手から流れ込んでくる映像のおかげで、私は良好な人間関係を築けている。

 ぱっと周りを見渡すと、誰も彼も頭の上に数字が浮かんで見える。それが私にだけしか見えないことは、明らかであった。
 万里は二百三、沙子は百五十、クラス一の美少女は五十、地味で大人しい委員長は百二十五、サッカー部のエースは九十七で、彼は昨日より数字が増えている。それを知る度に、昨日何かあったのだろうか、と勘繰ってしまう。
 その数字が、人が涙を流した回数だとやっと知ることができたのは、私が中学に上がってからだった。手に触れるとその子が泣いている映像が流れる時がある……そしてその映像と数字は深く結びついていることから、私は段々と自分の能力を理解していった。