「お前、意外と泣き虫だな」
そう笑って、彼が私の頬を撫でた。相変わらずポーカーフェイスで感情が読み取りづらい君だけれど、瞳がほんの少し優しくなったのを見て、愛しさが溢れてしまい、思わず頬にキスを仕返してしまった。
吉木はそんな私を見て、困ったような、照れたような笑い方をした。私は吉木の、このなんともいえない不器用な笑顔が、とても好きだ。
「お腹空いた、お昼食べよう」
ソファから起き上がり、少し緩くなったビールを手に取る。吉木も同じ銘柄のビールを手に取り、カシュっと音を立てて蓋を開けた。
窓からは、眩しいほどの光が降り注いでいる。ゆらゆらと揺れるカーテンが、風に吹かれて大きく舞い上がった。
大切な人から逃げない自分でありたい。嫌われることを恐れずに、近づくことはできないのだと、気づいたから。
自分の意思で君と一緒にいるのだから、もう何も怖くないよ。