……お疲れ、くらい言うべきなのだろうか。でも、そんな間柄でもない。目も合わせたこともなければ、話したこともない。自意識過剰かもしれない。でも、雨より冷ややかな空気が流れている気がする。
「あのさ」
湿った埃のにおいがする倉庫に、彼の声が響いた。私は思わず肩を震わせ、カーテン越しに彼の姿を見つめる。
今、私に話しかけているの……? 一体、何が起こったというのだろうか。雑巾を動揺して取り落としてしまった。
「あのさ、俺別に、あんた達グループが嫌いなわけじゃないよ。女嫌いなわけでもない」
彼の影は、ゆっくりと出口の方へ向かっていく。私は、彼が口を開いてから、気づくとずっと息を止めていた。
「あんたが嫌いなだけだから、勘違いすんなよ」
そう言い切って、彼は倉庫の重たいドアを閉じて去っていった。
倉庫の中にいるはずなのに、全身に豪雨を浴びたかのように、体の内から冷えていく。と同時に、沙子や万里も含めて嫌われていると思っていた自分を恥ずかしく思った。