「陸斗くん……? どうして……」
壁に背を預けていた彼は、私が声をかけると真っ直ぐに歩いてきた。
静かに揺れる栗色の髪が、彼の目元に薄い影を作っている。
「……どれほどのものかと思って、俺もプレゼン、見に来てたんだよ」
「え……」
どつやら陸斗くんも、朝陽たちのプレゼンテーションを見ていたらしい。
講堂内にはたくさんの人が集まっていたから、その中に彼も紛れていたのだ。
でも……どうして?
私はつい目を丸くして、陸斗くんを眺めてしまった。
そんな私の戸惑いも、彼にはお見通しなのだろう。
一瞬何かを考えてから、陸斗くんはふっと口元を緩め、再び静かに口を開いた。
「……とりあえず、完敗って感じ」
完敗?
呆れたようにそう言った彼は、可愛らしく首を傾げる。
「それで、菜乃花はどうするんだよ」
不意に、問われた私は伏せていた睫毛を上げた。
ブラウンの瞳に射抜かれて、心臓がドクリと大きく脈を打つ。