そうすれば長い脚が、静かに止まる。

つられて私も歩みを止めると、綺麗なブラウンの瞳がゆっくりと、背後の私を振り返った。


「別に、俺は自分のしたいことをしただけだから」


ぶっきらぼうにそれだけ言って、陸斗くんは私の手を離す。

自分のしたいことをしただけ。

陸斗くんは、いつもそうだ。

いつも、どんなときでも自分に正直で、嘘がなくて……。私はそんな彼を、いつだって眩しく思う。


「……うん。それでも、ありがとう」


思わず小さく笑うと、彼は両手をズボンのポケットへと入れ、歩き出した。

背中を追うように駆け出せば、長い廊下に一日の始まりを知らせる朝のチャイムが鳴り響く。

──ごめんね、ありがとう。

きっと、リュージくんと陸斗くんにはどれだけ伝えても足りない言葉だ。

窓から見上げた空には太陽が浮かんでいて、燦々と私達を照らしつけていた。