「……すみません、忘れました」
「ああ!?」
「プリント、どこに置いてきたか忘れました」
私の言葉に、今の今まで黙りこくっていたクラスメイトたちが、ザワザワとざわめきだした。
「お前なぁ……忘れたって、どういうことだよ!! クラス全員分だぞ! 本当に、何考えてんだ!」
ドンッ!と、一際強く教卓を叩かれて、身体が大きく飛び跳ねた。
私は恐怖で萎縮した心を精一杯奮い立たせると、もう一度静かに、口を開く。
「ほ、放課後に、探します。絶対、見つけるまで探します」
「ああ!? 何言ってんだ!」
「それで、必ず見つけて持ってきます。だから……本当に。本当に、ごめんなさい……っ」
そこまで言い切ると、私は深々と頭を下げた。
プリントを置き忘れてきたことは、間違いなく私の失敗だ。
そのせいで、クラスのみんなにも迷惑を掛けてしまったし、先生に怒られるのも当然だと思ってる。
私が悪い。私が言われたことを、きちんとやり切れなかったせいだから。
「本当に……すみませんでした」
「ハァ……。そんなんで、許されると思うか?」
けれど先生は、呆れたような溜め息を吐いて、指先でコツコツと性急に教卓を叩いた。
思わず下げていた顔を上げれば、私を心底馬鹿にして見下した、温度のない先生の目と目が合った。