「それで、プリントはどこへやったんだ!!」
言われて、思い当たる節は一つしかない。
──第三音楽室。
ハッキリとした確証もないけれど、その場所以外は思い浮かばない。
もしも音楽室になかったら、絶望的だ。
だけど全てを正直に話してもいいのか……。私は先生を前に、迷っていた。
「おい、月嶋! さっきから聞いてんのか!?」
【第三音楽室】
あそこは今は、授業でも滅多に使われない場所なのだ。
商業科のカリキュラムから音楽の授業がなくなって以来、空き教室となっている。
つまり、入る理由のない場所なのだ。
鍵は掛かっていないけれど、昔、一度だけあそこで朝陽を待っていて、偶然通り掛かった普通科の先生に注意されたことがある。
『用もないのに、空き教室に勝手に入ったらいけないよ。あらぬ疑いをかけられることもあるからね』
確かに先生の言うとおり、空き教室にあるものが壊れたりしたら、そこにいた生徒が無条件で疑われてしまうだろう。
そういうことのないように、あのときの先生は親切心で言ってくれたのだと思う。
単純に、勝手に空き教室を使うなと言いたかったのかもしれないけれど。
先生たちも、学校にあるすべてのものを管理するのは難しいのだ。