……だけど、普通なのに、普通じゃない。
そんなふうに感じてしまうのは、私の思い過ごしだろうか。
もちろん朝陽が答えをくれるわけもないし、私も朝陽に何かが違うことを尋ねることができなかった。
やっぱり私の、考え過ぎかもしれない。
朝陽は別に、何も深くなんて考えていなくて──ただ毎日を、今まで通りに過ごしているだけなのかも。
「ハァ……」
今日何度目かもわからない溜め息を吐いた私は、ふと、通り掛かった教室の中の時計に目をやった。
昼休みが終わるまで、あと二十分……。
このまま教室に戻っても、また一人でウジウジと考え込んでしまうだけだろう。
……よし。
結局私は数秒考えたのち、その場でくるりと踵を返した。
向かうのは、第三音楽室だ。
あと二十分。あの場所で、少し頭を冷やしてみよう。
そうして私はクラス全員分のプリントを抱えたまま、音楽室に向かう足を速めた。