「あら、あなたは……」
その時、ふと女性が私のほうを見た。無視するわけにもいかないから小さな会釈を返す。
「もしかして小枝ちゃん!?久しぶりね!美人さんになってるから誰だか分からなかったわ」
どうやら私のことを知ってるみたいだけど、私こそこの人が誰だか分からない。困ったようにチラッとおばあちゃんを見るとすぐに助け船を出してくれた。
「ほら、小学校が一緒だった菜々美ちゃんのおばあちゃん」
……ななみちゃん?
記憶の糸を手繰り寄せるように思い出してみたけど菜々美ちゃんの顔が分からない。でもなんとなく名前には聞き覚えがあるような気がした。
「菜々美は私立の高校に行ったのよ。寮生活でほとんどうちに帰ってこないし今は冬休みだっていうのに来週の日曜日にちょっと顔を出すねって、それだけ」
「………」
「実家に帰るより友達と遊びたいんでしょうけど、寂しいものよね」
私はなんて返したらいいのか分からずに、とりあえず雪を集めているふりだけしていた。