“盗撮事件が原因で一週間部活動禁止”となったのを、私は部活へ行く準備を完全に済ませた後……つまりたった今知った。
「あんた朝会、全部寝てたんでしょ、バカ」
呆れたような目で見てくる梓を前に、筆巻きを片手に私はただ縮まることしかできない。
「だってどう見たってもうみんな帰る支度してるでしょうよ」
「そういえば人があんまりいない……。部室の鍵戻しに行かなきゃ……」
「ごめん、あたし今日彼氏と会うから急いでるんだけど……、先帰っても平気?」
梓の言葉に、私はもちろんと頷き、手を振り別れた。なんだよもう、ちゃんと話聞いておけばよかった。梓が風のように教室を出ていった後、私は口を尖(とが)らせながら帰りの支度を済ませた。
なんだか最近パッとしないな。
「鍵返しに行くの面倒臭いな……。あ、芸棟の裏から回った方が早いか」
私はあまり気乗りしないままバッグを肩にかけて教室をあとにした。気づけば教室に残っていたのは私が最後で、それも下手したら校内で一番最後だったかもしれない。私がせっせと部活の支度をしているうちに、みんなは部活がないことに喜んで帰ってしまったようだ。上履きの足跡で白くなった薄い緑色の廊下を歩いて、下駄箱に向かい一旦靴を取ってから芸棟へと向かう。芸棟は校舎とは別に建てられているので、一度外に出る必要があるのだ。芸棟裏はゴミ捨て場となっているけれど、日当たりも悪いのでなんだか雰囲気が少し怖くて私はあまり好きではない。けれど、芸棟の裏に職員室があるから、近道をするために私はよくこの道を利用していた。校舎と職員室は繋(つな)がっているけれど、中から入る場合、コの字に遠回りしなければならないので、一度外に出て直進してしまった方が早いのだ。
芸棟のドアに辿(たど)り着いた私は、中に入るため上履きに履き替えようと腰をかがめた。そのとき、スニーカーが消えた。正しくは、奪い取られた。バッと後ろを振り向くと、そこには私の上履きを片手に持った日向君が立っていた。
「え、日向君?」
「今日部活休みじゃないの?」
目を見開いて驚いた私とは反対に、日向君は落ち着いていた。
「あ、うん、先生の話聞いてなくて間違って部室の鍵持ってきちゃってさ」
「そっか、じゃあ途中まで一緒に行こう。俺も今保健室で昼寝して帰ってきたところなんだ」
「昼寝……、そういえばこの間、保健室の先生怒ってたよ、日向君……」
「あんた朝会、全部寝てたんでしょ、バカ」
呆れたような目で見てくる梓を前に、筆巻きを片手に私はただ縮まることしかできない。
「だってどう見たってもうみんな帰る支度してるでしょうよ」
「そういえば人があんまりいない……。部室の鍵戻しに行かなきゃ……」
「ごめん、あたし今日彼氏と会うから急いでるんだけど……、先帰っても平気?」
梓の言葉に、私はもちろんと頷き、手を振り別れた。なんだよもう、ちゃんと話聞いておけばよかった。梓が風のように教室を出ていった後、私は口を尖(とが)らせながら帰りの支度を済ませた。
なんだか最近パッとしないな。
「鍵返しに行くの面倒臭いな……。あ、芸棟の裏から回った方が早いか」
私はあまり気乗りしないままバッグを肩にかけて教室をあとにした。気づけば教室に残っていたのは私が最後で、それも下手したら校内で一番最後だったかもしれない。私がせっせと部活の支度をしているうちに、みんなは部活がないことに喜んで帰ってしまったようだ。上履きの足跡で白くなった薄い緑色の廊下を歩いて、下駄箱に向かい一旦靴を取ってから芸棟へと向かう。芸棟は校舎とは別に建てられているので、一度外に出る必要があるのだ。芸棟裏はゴミ捨て場となっているけれど、日当たりも悪いのでなんだか雰囲気が少し怖くて私はあまり好きではない。けれど、芸棟の裏に職員室があるから、近道をするために私はよくこの道を利用していた。校舎と職員室は繋(つな)がっているけれど、中から入る場合、コの字に遠回りしなければならないので、一度外に出て直進してしまった方が早いのだ。
芸棟のドアに辿(たど)り着いた私は、中に入るため上履きに履き替えようと腰をかがめた。そのとき、スニーカーが消えた。正しくは、奪い取られた。バッと後ろを振り向くと、そこには私の上履きを片手に持った日向君が立っていた。
「え、日向君?」
「今日部活休みじゃないの?」
目を見開いて驚いた私とは反対に、日向君は落ち着いていた。
「あ、うん、先生の話聞いてなくて間違って部室の鍵持ってきちゃってさ」
「そっか、じゃあ途中まで一緒に行こう。俺も今保健室で昼寝して帰ってきたところなんだ」
「昼寝……、そういえばこの間、保健室の先生怒ってたよ、日向君……」