「どこのバカが盗撮なんかしてんだろうね」
朝、学校は少し騒がしかった。梓は呆れたような表情で腕組みをして座っている。私は、そんな梓の隣の席に荷物を下ろし、耳からイヤホンを取って本体に巻きつけた。
どうやらこの学校で女子生徒を盗撮した写真をネットで売りさばいてる生徒がいるらしい。
「さっさと自首しろよ、朝会増やすなっつーの。もー、校長、話長いし」
足をばたつかせる梓をなんとか静めていると、ちょうどチャイムが鳴った。それが鳴り止んだのとほぼ同時に先生が教室に入り、続いて日向君が入った。
ん? あれは遅刻じゃないのか? なんて疑問はもはや愚問。
日向君は平然と席に荷物を置き座った。先生はそれを確認してから、口を開いた。
「何人か知ってる生徒もいると思うが、盗撮事件が校内で起こった。今日はその緊急朝会がある。速やかに体育シューズを持って体育館へ移動すること。以上」
ものの十秒でSHR(ショートホームルーム)は終わり、生徒たちは体育館へと向かい始めた。日向君は、終始眠たそうに机に顎(あご)をつけていたが、珍しく瞳はしっかり開いていた。私は、後ろの壁にかかっている体育シューズのなかから、自分のものだけでなく日向君のものも取った。それを持って、いまだ机に顎をつけたままの日向君に近づくと、日向君は、なんだかむすっとした表情をしていた。
「あの、日向君……?」
恐る恐る声をかけると、彼はハッと目を少し見開いてから、私と目を合わせた。
「あの、体育シューズ、ついでに持ってきた」
「あ、ごめん。ありがと、考えごとしてた」
考えごと? と聞き返す前に、日向君は焦ったように体育シューズを持って去っていった。
結局、日向君は朝会には出なかった。やっぱり私、日向君に避けられてるのかな。体育シューズなんか、持っていかなきゃよかった。余計なことしちゃったな。悶々としていた私には、校長先生の長い話も全く耳に入らなかった。日向君、助けてくれてありがとう、この間古本屋にいたよね、もしかして私のこと避けてる? 日向君に言いたいこと、聞きたいこと、どうしてこんなにたまってるんだろう。
朝、学校は少し騒がしかった。梓は呆れたような表情で腕組みをして座っている。私は、そんな梓の隣の席に荷物を下ろし、耳からイヤホンを取って本体に巻きつけた。
どうやらこの学校で女子生徒を盗撮した写真をネットで売りさばいてる生徒がいるらしい。
「さっさと自首しろよ、朝会増やすなっつーの。もー、校長、話長いし」
足をばたつかせる梓をなんとか静めていると、ちょうどチャイムが鳴った。それが鳴り止んだのとほぼ同時に先生が教室に入り、続いて日向君が入った。
ん? あれは遅刻じゃないのか? なんて疑問はもはや愚問。
日向君は平然と席に荷物を置き座った。先生はそれを確認してから、口を開いた。
「何人か知ってる生徒もいると思うが、盗撮事件が校内で起こった。今日はその緊急朝会がある。速やかに体育シューズを持って体育館へ移動すること。以上」
ものの十秒でSHR(ショートホームルーム)は終わり、生徒たちは体育館へと向かい始めた。日向君は、終始眠たそうに机に顎(あご)をつけていたが、珍しく瞳はしっかり開いていた。私は、後ろの壁にかかっている体育シューズのなかから、自分のものだけでなく日向君のものも取った。それを持って、いまだ机に顎をつけたままの日向君に近づくと、日向君は、なんだかむすっとした表情をしていた。
「あの、日向君……?」
恐る恐る声をかけると、彼はハッと目を少し見開いてから、私と目を合わせた。
「あの、体育シューズ、ついでに持ってきた」
「あ、ごめん。ありがと、考えごとしてた」
考えごと? と聞き返す前に、日向君は焦ったように体育シューズを持って去っていった。
結局、日向君は朝会には出なかった。やっぱり私、日向君に避けられてるのかな。体育シューズなんか、持っていかなきゃよかった。余計なことしちゃったな。悶々としていた私には、校長先生の長い話も全く耳に入らなかった。日向君、助けてくれてありがとう、この間古本屋にいたよね、もしかして私のこと避けてる? 日向君に言いたいこと、聞きたいこと、どうしてこんなにたまってるんだろう。