▼錯綜──中野サエ
「屋台がいい。絶対屋台」
「お化け屋敷がいいよー!」
「えー。去年と一緒のドーナツ屋でいいじゃん。好評だったし」
「あの、じゃあ、とりあえず多数決で、候補を黒板に書くんで一人一回手を挙げてください……」
文化祭のシーズンが近づいている。運悪く実行委員になってしまった私は、同じ実行委員の田(た)中(なか)君にヘルプの目線を送ったが役に立たない。小心者で目立つことを嫌うタイプの彼は、気まずそうに目線を下に落としている。こんな私たちが進行役でも、クラスの子は意見だけはたくさん言ってくれるのでとても助かる。なんだかんだ言って、みんながやる気があることが救いだ。次々と出てくる案を、私は黒板に書き写すのにいっぱいいっぱいだった。
「じゃあ、挙手してください。まずお化け屋敷に賛成の人」
なんとなく日向君を見ると、彼は机にうつ伏せてぐっすり睡眠中のようだった。体調悪いのかな……なんだか、今朝はすごく顔色が悪かったし。と、思っていたら、ゆっくり手だけ挙げて、意外にもこの話し合いにちゃんと参加していた。
「じゃあ、今年もドーナツ屋に決定ですがいいですか?」
「中野ちゃん、オッケー。ありがとう」
とりあえず意見がまとまったことにほっとしていると、今までずっと黙っていた先生は、すぐさま終わりの号令をかけて、ちゃっちゃと教室を去っていった。なんて薄情な先生だと思いながら資料をまとめていると、田中君とばちっと目が合ってしまった。
「二人でがんばろうね、田中君!」
なんだかんだで、文化祭はとても楽しみだ。私は田中君と握手を交わしてから意見をまとめた黒板をノートに書き写し始めた。田中君はそんな私に気づかず黒板をササッと消してしまった。はたして田中君とうまく息を合わせて頑張れる日は来るのか、不安になった。
「屋台がいい。絶対屋台」
「お化け屋敷がいいよー!」
「えー。去年と一緒のドーナツ屋でいいじゃん。好評だったし」
「あの、じゃあ、とりあえず多数決で、候補を黒板に書くんで一人一回手を挙げてください……」
文化祭のシーズンが近づいている。運悪く実行委員になってしまった私は、同じ実行委員の田(た)中(なか)君にヘルプの目線を送ったが役に立たない。小心者で目立つことを嫌うタイプの彼は、気まずそうに目線を下に落としている。こんな私たちが進行役でも、クラスの子は意見だけはたくさん言ってくれるのでとても助かる。なんだかんだ言って、みんながやる気があることが救いだ。次々と出てくる案を、私は黒板に書き写すのにいっぱいいっぱいだった。
「じゃあ、挙手してください。まずお化け屋敷に賛成の人」
なんとなく日向君を見ると、彼は机にうつ伏せてぐっすり睡眠中のようだった。体調悪いのかな……なんだか、今朝はすごく顔色が悪かったし。と、思っていたら、ゆっくり手だけ挙げて、意外にもこの話し合いにちゃんと参加していた。
「じゃあ、今年もドーナツ屋に決定ですがいいですか?」
「中野ちゃん、オッケー。ありがとう」
とりあえず意見がまとまったことにほっとしていると、今までずっと黙っていた先生は、すぐさま終わりの号令をかけて、ちゃっちゃと教室を去っていった。なんて薄情な先生だと思いながら資料をまとめていると、田中君とばちっと目が合ってしまった。
「二人でがんばろうね、田中君!」
なんだかんだで、文化祭はとても楽しみだ。私は田中君と握手を交わしてから意見をまとめた黒板をノートに書き写し始めた。田中君はそんな私に気づかず黒板をササッと消してしまった。はたして田中君とうまく息を合わせて頑張れる日は来るのか、不安になった。