私はその後すぐに自分の習字道具を片づけてから日向君を手伝った。りさと梓は観たいドラマの再放送があるから、と言ってさっさと帰ってしまった。薄情者にも程がある。一年生は、全員残って日向君のお手伝いをしてくれた。どこかの二年生とは大違いで、いい後輩でよかった。
「本当にごめんね、こんなことに巻き込んじゃちゃって……」
墨で黒くなった雑巾を、水で洗い流しながら謝ると、彼は静かに首を横に振った。
「中野、あの、ごめん本当……。習字、破いちゃって……」
「だから何度も言うけど、あれは失敗作だったんだよ。本当に……本当に気にしないで」
そう言っても、日向君はまだ申し訳なさそうにしていた。もしかして、私が日向君に気をつかって嘘をついているとでも思っているのだろうか。こんなの心を読んでくれれば一発で分かると思うんだけどな。でも、この気持ちが伝わらないということは、オフにしてくれているんだ。
「そういえば、バイトってこの前のお店?」
「うん。そういえば今日他の人も遅れるって言ってたから、開店前の掃除、宮本さん一人でも大丈夫かな」
「え! まずいじゃんかそれ」
私は思わず驚いて蛇口を逆にひねってしまった。その瞬間、滝のように水が噴き出た。制服はもちろん水しぶきでびしょびしょだ。慌ててさっきとは逆の方向にひねったけれどもう手遅れだった。日向君にも被害が及んでいないか慌てて確認しようとしたけれど、彼は私のあまりのそそっかしさに笑っていた。
「中野。この間の墨といい……」
「ごめんなさい、昔から落ち着きがなくて……」
「前髪まで濡れてるよ」
「本当にごめんね、こんなことに巻き込んじゃちゃって……」
墨で黒くなった雑巾を、水で洗い流しながら謝ると、彼は静かに首を横に振った。
「中野、あの、ごめん本当……。習字、破いちゃって……」
「だから何度も言うけど、あれは失敗作だったんだよ。本当に……本当に気にしないで」
そう言っても、日向君はまだ申し訳なさそうにしていた。もしかして、私が日向君に気をつかって嘘をついているとでも思っているのだろうか。こんなの心を読んでくれれば一発で分かると思うんだけどな。でも、この気持ちが伝わらないということは、オフにしてくれているんだ。
「そういえば、バイトってこの前のお店?」
「うん。そういえば今日他の人も遅れるって言ってたから、開店前の掃除、宮本さん一人でも大丈夫かな」
「え! まずいじゃんかそれ」
私は思わず驚いて蛇口を逆にひねってしまった。その瞬間、滝のように水が噴き出た。制服はもちろん水しぶきでびしょびしょだ。慌ててさっきとは逆の方向にひねったけれどもう手遅れだった。日向君にも被害が及んでいないか慌てて確認しようとしたけれど、彼は私のあまりのそそっかしさに笑っていた。
「中野。この間の墨といい……」
「ごめんなさい、昔から落ち着きがなくて……」
「前髪まで濡れてるよ」