ついにバレてしまった。俺の最大の秘密が。
一日過ぎても、その真実は変わらず、朝起きた瞬間どっしりとその現実が胸の中に襲い掛かってくる。今までバレないように特別気をつけてこなかったつけが回ってきたんだ。だって普通思わないだろう。人の心が読めるとか、そういう特別な能力があるかもしれないなんて。普通に生きていれば、静かに過ごしていれば、誰も俺なんかに興味を持たず通り過ぎていくと高をくくっていたから、変に警戒し過ぎるより普通にしていればバレずに済むと思っていたんだ。
薄いカーテンをすり抜けて降り注ぐ真っ白な朝日を浴びて、俺は重たい体をなんとか起こした。布団をめくった瞬間、自分の服から匂う香水の香りに思わず顔をゆがめる。そうだ、昨日はバイトで疲れ過ぎて、部屋着にも着替えずにこのまま眠ってしまったのだった。高校生のくせにあんなに大人びたバーで働いているなんて、きっとバレたら速攻で教師に呼び出されるだろう。
スマホを見ると、昨日お店に来てくれた女性からのメッセージがたまっていた。高校生であることは隠して働いているので、この女性もまさか俺がお酒も飲めない年齢だなんて想像していないんだろう。自分のこの老け顔に初めて感謝する。一人暮らしをするためには、喫茶店やファミレスなんかじゃとても生きていけない。なんのために生きているのかは分からないけれど、ただとにかく生きていかねばと、そう思って毎朝起きている。
香水臭いシャツを洗濯機に投げ入れて、シャワーを浴びてから制服に腕を通した。昨日は遅番だったので、本当は今日は休もうと思っていたけれど、確認したいことがあるから行かねばならない。
 中野が本当にあの言葉を受け入れたのか、心の中を覗いてみたい。バラされたら記憶を消せばいい。
……もしくは俺が、消えればいいだけの話だ。