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倉田くんへのお守りも完成していた。

いつまでも渡せないでいるのは、学年が違うのもあってぜんぜん会わないせい。


嘘だ。本当は何回か顔を合わせた。言葉は交わさず、目が合うだけというのが圧倒的に多いけど、それでも声をかけて引き止めるチャンスなら何度もあった。

それができずにいたのは、倉田くんのスポバに完璧なお守りがぶら下がっているのを見てしまったからだ。

柚ちゃんお手製のお守り。一生懸命作っているのを隣で見ていたのでよく知っている。


デザインもかわいくて、造りもきれいで、なにより選手への愛情がいっぱいで。

それがゆらゆら揺れているのを見ていたら、こんなチャチな布きれを渡すことのほうが申し訳なく思えてしまった。恥ずかしくもあった。どへたくそなのは自覚済みだ。


それに、倉田くんも、なにも言ってこないしな。涼みたいに催促でもしてくれたらすんなり渡せるんだけど。

それともあんなのは社交辞令だったのかもしれない。

そりゃ、そうか。そうだよね。とくべつ仲良くもない先輩に、ふつう、本気であんなお願いはしないね。



そうこうしているうち、その週末には2回戦も終わって。

結果は白星。県内でもかなりレベルの高い進学校を相手に快勝だった。

春日は今回、ホームランを放った。涼は守備で魅せた。市川も調子がよさそうだった。倉田くんは、やっぱり今回もものすごく走った。

わたしもノドがかれるまで応援した。

2回戦も、ほんとに、楽しかった。