⚾ ゜*。+
「きのう泣いてただろ」
オハヨウにオハヨウと返したら間髪入れずにこれが飛んできた。
初戦突破おめでとう、と言うつもりだったのに、いっきに萎えた。
「泣いてないし」
「いーや。見たもんね。意外とちゃんと見えるんだぜー」
打席に立つ選手の顔が見えたのだから、ソッチからコッチが見えていてもべつに驚かない。
しまったな。勢いにまかせてあんなふうに声を張り上げるんじゃなかった。せめて涙くらいはきちんと拭いておくんだった。
つんと無視してやると、朝練上がりのどこかさっぱりした涼は、腹いせのようにわたしのまわりをうろちょろしだした。ウザ。
「なあ、初戦終わっちゃったんだけど」
「知ってるよ。現場にいたし」
「そろそろ俺に渡すもんない?」
ウザ。
という顔で見上げても、こんなのはもう慣れたってふうにぜんぜんめげない。
しょうがないな。
「きのう、超疲れてたのに、徹夜でやったんだからね」
スクバのなかから加工したフェルトを取り出す。
なんか、こうして見るとメチャクチャお粗末だ。「ほんとにこれでいいの?」と、頭のなかに棲むもうひとりのわたしが言う。
いや、よくないかも。よくない。ぜったいダメ。
「……やっぱナシ」
すでに右手をコッチに差しだしていた涼が「はっ?」と目を見開いた。
「いやいや意味わかんねーけど」
「やっぱナシって言ってんの」
「だからなんで? できてんじゃん? なんで?」
だって、それは、ちょっとこんなのじゃ。
もごもごとアレコレしゃべってみるけど、あんまり情けなくてどれも声にならない。
「……べつに、いいじゃん。矢野ちゃんにもらったんでしょ」
「矢野ちゃんと光乃はぜんぜんベツモノだよ」
なんでこんなに必死になってるんだ。涼も、わたしも。
「きのう、光乃の声すげー聞こえた」
一瞬の沈黙がふっと落ちたあとで、涼はいきなり言った。
「きのう泣いてただろ」
オハヨウにオハヨウと返したら間髪入れずにこれが飛んできた。
初戦突破おめでとう、と言うつもりだったのに、いっきに萎えた。
「泣いてないし」
「いーや。見たもんね。意外とちゃんと見えるんだぜー」
打席に立つ選手の顔が見えたのだから、ソッチからコッチが見えていてもべつに驚かない。
しまったな。勢いにまかせてあんなふうに声を張り上げるんじゃなかった。せめて涙くらいはきちんと拭いておくんだった。
つんと無視してやると、朝練上がりのどこかさっぱりした涼は、腹いせのようにわたしのまわりをうろちょろしだした。ウザ。
「なあ、初戦終わっちゃったんだけど」
「知ってるよ。現場にいたし」
「そろそろ俺に渡すもんない?」
ウザ。
という顔で見上げても、こんなのはもう慣れたってふうにぜんぜんめげない。
しょうがないな。
「きのう、超疲れてたのに、徹夜でやったんだからね」
スクバのなかから加工したフェルトを取り出す。
なんか、こうして見るとメチャクチャお粗末だ。「ほんとにこれでいいの?」と、頭のなかに棲むもうひとりのわたしが言う。
いや、よくないかも。よくない。ぜったいダメ。
「……やっぱナシ」
すでに右手をコッチに差しだしていた涼が「はっ?」と目を見開いた。
「いやいや意味わかんねーけど」
「やっぱナシって言ってんの」
「だからなんで? できてんじゃん? なんで?」
だって、それは、ちょっとこんなのじゃ。
もごもごとアレコレしゃべってみるけど、あんまり情けなくてどれも声にならない。
「……べつに、いいじゃん。矢野ちゃんにもらったんでしょ」
「矢野ちゃんと光乃はぜんぜんベツモノだよ」
なんでこんなに必死になってるんだ。涼も、わたしも。
「きのう、光乃の声すげー聞こえた」
一瞬の沈黙がふっと落ちたあとで、涼はいきなり言った。