「てきとーでいいんだよ」
やっぱりつきあいが長くなると似てくるものなのかな。和穂とまるっきり同じ台詞を吐いた春日に、今度はこっちが大笑い。春日が意味わかんねって顔を浮かべた。それでもずっとへらっと笑っていて、このゆるい感じが、和穂は好きなのだと言う。
ふと、遠くから春日を呼ぶ声がした。野球部のやつらだ。よく見たら、みんないる。みんな練習用ユニフォームを着ている。
「いまから西グラで紅白戦やるんだ。夏のスタメン決め」
春日の言葉で和穂が思い出したように「そうだったね」と答えた。ふたりは仲が良いくせにけっこうドライなところがあって、たまにズッコケそうになる。これもつきあいの長さ故なのか。
「和穂も、村瀬も、暇だったら来ねえ? つーか暇だろ?」
エッと思ったけど、春日が疑いもなく言ったのと、和穂が行きたがったので、野球部といっしょにぞろぞろと西グラへ向かうこととなった。和穂は同級生とはもちろん、後輩たちとも面識があるようだった。キャプテンの彼女というのはなかなかの地位があるみたいだ。
「みーつのっ」
部員たちと談笑する和穂に放っておかれながらひとり歩いていると、突然うしろからぽんと肩を叩かれた。力かげんがなってなくて少し前によろける。
「ちょっと涼(リョウ)っ」
「あ、わり」
ぜんぜん悪いなんて思ってないな。
なぜか3年間ずっと同じクラスの腐れ縁・藤本涼は、調子よく「おまえの体幹がダメなんだよー」と言うと、わたしの隣へ音もなくならんだ。
しゃべり方と同じ、ほんとにふわっとした歩き方をする。宙に浮いているみたいな。これでよく野球なんかやれるなといつも思うけど、こう見えて涼はなかなか上手い選手だったりする。
「チビめ」
仕返しに、言ってやった。
「あ、てめ、言いやがったな!」
涼は平均ちょっとしかない身長を気にしているらしい。セカンドを守るのに背丈はあまり必要ない気がするのだけど、それとこれとは別なんだと、男としての真価が問われているんだと、わけのわからないことを前に言っていたな。