「和穂にもよく言われるんだよ」
ふてくされたような言い方になってしまったかも。倉田くんがコテンと首をかしげた。
「怪獣みたいな顔が似てるって」
「……え!? 違いますよ、おれ、ぜんぜん、そういうつもりじゃ」
うんと年下の男の子を相手にしてるみたい。こんなジョークも真剣に受け止めてくれる倉田くんがおかしくて、かわいくて、もっとからかいたくなってしまう。
まぶたを半分下げてじとっと見つめると、目線の同じ幼い顔が本当に困りだしたので、思わず吹き出してしまった。いきなりブハッと言ったわたしに彼はあっけにとられていた。
「うそうそ、ごめん、わかってるよ、ごめんね」
「……ところで肩はもう大丈夫ですか」
今度は倉田くんのほうがふてくされたように言った。
肩って?
「あ、ファウルボールのところ? さすがにもう大丈夫だよ! アザもきれいに消えたし……」
「やっぱりアザになってたんですね」
ありゃ。言ってなかったかな? 言ってなかったか。だって、言えばきっともっと気にするだろうと思ったんだ。言わなくてもあんなに気に病んでいたのに。
「うん、でももうほんとに大丈夫だよ。そうだ、マカロンほんとにおいしかった! ありがとう。次会ったらお礼しなくちゃって思ってたんだけど、なにがいいかなー」
ひとえのたれ目がびっくりしたようにわたしを見つめた。それから、きゅっとすぼまった。
「なんで村瀬さんが『お礼』するんですか」
「え、だってそりゃ、あんな貴重なものをいただいてしまったわけだし」
「おれ『お見舞い』で持ってったんですよ。それに『お礼』って、おかしいじゃないですか。このやり取り終わんなくなるじゃないですか」
よくわからないけど、どうやらかなりツボにはまったらしく。めちゃくちゃ本気で笑ってる少年を見ていたらわたしもつられておかしくなってきた。
倉田くんは、こういう笑い方をするんだな。
ひとえのたれ目をもっとたれさせて。目尻にたくさんの皺を刻んで。白い歯をいっぱいに見せて。
まわりを幸せにする笑顔だ。胸の真ん中がぽかぽかする。