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毎日、快晴だ。

今年の梅雨は本当に雨が降らない。ニュースでは農家が泣いていると言っていたな。そういや、野菜が高騰しているって、お母さんも泣いていたな。

空を見上げ、ちょっと早すぎるカンカン照りにうんざりしていたところで、涼と遭遇した。目を疑う。まだ朝練の時間では?


「もらったぜ」


きょうもだらしなく制服を着崩している涼は、わたしを視界に発見するなり、オハヨウも言わないでそう放った。なにを、と訊ねる前に、涼が答えを言った。


「背番号」

「えっ?」

「4番」


ふふんと鼻で笑われる。そういや去年もこんな具合で自慢されたなと思い出す。わたしも、ふふんと鼻で笑い返す。


「へー。おめでとう。よかったじゃん」


ローファーから室内用のスリッパへ履き替えつつ、抑揚のないお祝いの言葉をぶつけてやった。涼が憤慨しているのが見ないでもわかってしまう。


「ぜんぜんオメデトウが感じらんねー」

「言葉を言葉どおりに受け取れないなんてサイテー」

「光乃ってほんと俺に喧嘩売ってくるよな」


そう言いながらいつも無駄に寄ってくるのはどこのどいつだ。


「きょうはもう練習ないの?」


教室へ向かうのにくっついてきた涼に問うと、そうだよと軽い返事が降ってきた。


「背番号発表がある日はなんでかそこで解散なんだよな。去年もおととしもそうだったから、毎年そうなんだと思う。去年も俺、背番号持ってきた朝って早い登場だっただろ?」

「そうだっけ?」

「そうなんだよ。おいこら、覚えとけよー」


軽く頭を小突かれる。


涼って、いつも気づいたらふわっとそこにいるから、いるのといないのとの境目が曖昧なんだよな。

それくらい、わたしの日常にこの男がなじんでいるということだろうか。そんなにまでの時間を、わたしたちはいっしょに過ごしているのか。


「ねえ、お守り作ってあげよっか」


2年と数か月のことを思い返しているうちに、気づけばそんなことを口走っていた。