「光乃がいっしょにやってくれるならいいよ!」


目が点になった。

そんなわたしとは裏腹に、雪美の目がきらりと光った。


「ほんとに? 光乃もっ?」

「ええっ?」

「実は、できれば光乃にもお願いしたいと思ってたんだよね。和穂をオトせば芋づる式にいけるかなと思ってたんだけど、逆だったかあ」


ちょっと、まだ、やるなんて一言も言ってないけど。

胸の前で手を合わせる雪美としてはもう決定事項という感じらしく。あんまりうれしそうな、ほっとしたような顔をするので、やらないとはちょっと言い出しづらくて。

どうしよう、と左側の和穂の顔を見ると、ゴメンネって顔をされた。雪美がこんなに突っ走ってしまうとは和穂も思っていなかったみたいだ。


「ねえ、あした、1年生や新しく入る子たちはユニの採寸をするの。家庭科室でやるから、HRが終わりしだい和穂たちも行ってほしいな。そのあとはさっそく練習に参加して……、あ、知ってると思うけど、練習は武道場ヨコでしてるし、服装はジャージで大丈夫だからね!」


こんなふうにさらりと新たなメンバーを決めてしまっていいものかと疑問に思ったが、雪美ともみじいわくそこはまったく問題ないらしい。部活動や同好会といったかたちでなく、応援団とチアリーダーは毎年有志を募っているので、正式な手続きはいらないんだとか。

管轄の本田先生にはわたしから言っておくね、と、雪美はいつもの5倍くらい明るいトーンで言った。


「みんな、集まって! あしたからチアに参加してくれる原和穂ちゃんと、村瀬光乃ちゃんですっ」


さっそく1・2年生の前で紹介されてしまったわたしたちの逃げ道は完全に断たれたのだった。


帰り際、和穂から、けっこう本気のゴメンを何回か投げかけられた。いいんだ。和穂にはチアをやってほしいと思っていたから。それに、けっきょく強く断りきれなかったのはわたしだ。

本当はわたし、心のどこかでチアをやりたいと思っていたのかもしれない。
本当は、すごく、すごく、やりたかったのかもしれない。


お母さんにチアリーダーをやることを伝えると、ちょっとだけ苦い顔で微笑まれた。日焼けしちゃうねと、ヘンテコな心配をしたお母さんも、おにいのことをまだ吹っ切れていないのかもしれないと思った。