それにしたって暑い。校舎のなかから一歩外へ出ると、まだ6月だというのに太陽が容赦なくわたしたちの肌を焼いた。今年の梅雨は大丈夫なのかってくらい雨が降らないな。

ふたり同時にアッチーと言った。顔を見合わせてクックと笑い、アイス食べに行こうって話になった。といっても、貧乏なので学校の前のコンビニで安いソーダアイスを買って食べるだけ。それでも夏の高校生にとってはごちそうだ。


「そういやさっき、ゴンゾー、なんだって?」


しゃくっと、気持ちいい音をたてて水色の氷を噛み砕いた和穂が訊ねた。

コンビニの前で女子高生がふたり、買い食いしながらガールズトーク。いや、ガールズトークじゃないか。


「進路希望早く出せってサ」


同じようにアイスを歯で折り、わたしはつっけんどんに答えた。


「あー。まだ出してなかったの?」

「だって、なに書いていいかわかんなくって」

「なにって、大学名だよ!」


冗談言ってるみたいに笑われる。そりゃあ、そうか。もうわたし以外の全員が提出済みなんだっけね。

みんな、どれくらい悩んで記入したんだろう。和穂はどうなのかな? 聞いてみようかな。


「大学行く気ないの?」


質問しようとしたところを、先に質問されてしまった。


「べつに、そういうわけでもないんだけど」

「そんな真剣に悩むことないよ。半分くらいは遊ぶために進学するんだからさ!」


まるで自分もそのうちのひとりだと言うように、和穂はあっけらかんと笑う。なんか、力抜ける。へにゃっと笑い返したところで手の甲にひんやりとした感触が伝ってきた。


「あー! 和穂のせいで溶けたじゃんっ」


なんでだよ、なんてげらげら笑っていないで拭きとるのを手伝ってほしいよ。あーあ、お気に入りだったウサギのタオルハンカチ、ねちょねちょになっちゃった。