「だから、わたしはいいって」

「よくないよう。ぜったいユニ似合うし。おまけに、なんといってもキャプテンの彼女なわけだし。うってつけじゃん!」

「えー……」


困ったように言葉を濁す和穂に、雪美はそれでも食い下がる。雪美は見た目に反してけっこうガツガツいくタイプだ。いまつきあっているという大学生の彼氏も、雪美のほうから猛アタックを仕掛けたらしいし。


「ねえ、お願いっ」


きのうから、和穂はこうしてチアリーダーに勧誘され続けている。

というのも、チアの人数が足りないらしく。これじゃきれいなフォーメーションにならないんだと毎日懲りもせず和穂に泣きついている雪美を見て、本気でやってるんだなあと感動さえしてしまう。雪美って、普段はそんなに熱いタイプには見えないから。


「光乃は?」


赤色の折り紙に手を伸ばしながら、正面に座るもみじがふいに口を開いた。


「やんないの? チア」

「いやー、やんないね」

「ええ? マジ、即答じゃん」


大ざっぱなように見えるもみじの指が、器用にどんどん美しい鶴を作りあげていく。


「藤本のこと応援してあげないんだ?」

「ねえ、だからさ、なんでいちいち涼が出てくるのかホント謎」


わたしも負けじと青色の折り紙で鶴を作った。もみじのとは比べものにならないくらいへたっぴだけど。なんか、最初のひと折りから違うんだよなあ。


「だってハタから見てるとめちゃくちゃ仲いいよ? なんでつきあってないのか不思議なくらい。野球部でも、けっこう噂になってるよ。『3年5組の村瀬さんはフジモンの嫁』ってな具合で」


噂のレベルが小学生だ。思わず笑ってしまうと、サバサバした性格のもみじもいっしょになって笑い、しょうもないよねと言った。


「でもさ、ほんとに。藤本とか関係なく、光乃もチアやってくれたらすごい助かる」


赤い鶴が目の前にチョンと置かれた。その隣にへたくそな青い鶴を置き、てきとうに断ろうと口を開きかけたところで、左側からがばっと抱きつかれた。和穂だ。