⚾ ゜*。+


あーでもないこーでもないという声がうるさい。
右側に積み上がったミニ鶴の山と、左側に散乱している白や黒のフェルトの切れ端を眺めているうち、なんでこんなことをしているのだろうと飽き飽きした気分になってくる。


放課後を体育館下の女子更衣室で過ごすようになって2日。マネージャーやチア、応援団のみんなが練習を引き上げてここに来るまでのあいだ、帰宅部のわたしたちはふたりぽっちで千羽鶴の作業をしている。

和穂はほとんど折ってないけど。かと言って、お守りの製作もさほど進んでないみたいだけど。


「こんなんじゃダメだあ」


何度目のやり直しだろう。またひとつ、左側にフェルト生地が積み上がる。


「べつに不格好でもいいじゃん。見た目がどんなでも、和穂が作ったとなれば春日は喜んでくれるよ」

「わかってないなあ、光乃」

「わかんないし、まず和穂は向いてないんだし、キレイに作ろうとするほうが無謀でしょ」

「光乃にだけは言われたくなーい」


いま完成したばかりのへちゃけた鶴をきれいな指先が持ち上げる。ほんと、自分でもへたっぴだと思う。手先の不器用さについては正直あんまり人のこと言えないな。


「ていうか、けっきょく藤本のお守り作ってないしね」

「作るなんて一言も言ってないしね」

「えー、ぜったい喜ぶのに」

「涼を喜ばせてなんのメリットがあるんでしょう」

「照れてんの?」

「なににサ?」


そこで一瞬、会話が止まった。


「光乃ってぶっちゃけ、藤本、どうなの?」


更衣室にはわたしたち以外に誰もいないというのに、和穂は意味ありげに声をひそめた。なにがどうとは言われなかったけど、なにを言われているのかはわかった。


「どうもこうもないっつーの!」


冗談っぽく笑い飛ばす。

ナシナシ。涼はぜったいナシ。あんなふにゃふにゃの男、まず異性として見れないね。