「なあ、倉田、いまの見ただろ? 光乃ってマジでヤンキーだろ?」
左のわき腹をさする涼が助けを求めるように倉田くんを見る。彼はどっちの味方をすればいいのかわからないらしく、苦い顔を隠すように眉を上げながら笑った。
「ちょっと涼、日ごろから倉田くんにヘンなこと吹きこんでるんじゃないでしょうね?」
「えー。頭マッキンキンのやつがなに言ってんだよ」
「マッキンキンじゃない、わたしのはマッチャッチャ」
「同じだってーの」
ぜんぜん違うってーの。
「倉田もびびりまくってたんだぜ? やべえやつに打球当てちまったって」
倉田くんがコチンとかたまる。
嘘のつけない男の子だ。まあ、たしかに、こんなアタマした先輩に打球を当てっちゃったとなれば、多少はびびるか……。
和穂に言われた『半分は性分』の、残りの半分がいま判明した。
「ヤンキーだとか、なんだとか、涼が勝手に言ってるだけだからね」
たしかにまじめなほうではないかもしれないけど。ゴンちゃんにはよく問題児だと言われる。
「ふつうだから。ふつう! ちょっとボール当たったくらいで殴りこみに行ったりしないよ。こんなのぜんぜんへっちゃらだし」
カジュアルな言い方を心がけたおかげか、倉田くんはやっと笑った。苦い顔じゃない。にぱっとしたやんちゃな顔。
「はいっ、あの、たぶんすげーいい人だってきのうから思ってました!」
「えー、それはウソだあ」
「ほんとですよ。じゃなきゃ涼さんが仲良くするわけないし」
ね? と、倉田くんがからかうように涼を見上げる。
「腐れ縁だよ」
涼のかわりに答えると、
「だな。腐ってんな」
と、てきとうな同調が隣から飛んできた。