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学校に戻ると解団式があった。野球部と応援団とチアリーダー、三団体が三学年合同で毎年おこなっているらしい。

春日ともみじと雪美が代表でしゃべるのだが、3人ともグダグダでダメだった。特に春日がダメ。おまえまだキャプテンだぞって涼に野次を飛ばされ、みんなが笑った。後輩も笑った。

笑顔の解団式だった。みんな顔はぐしゃぐしゃに泣きはらしてるんだけど。いつも泣かないもみじがスピーチのあと泣き崩れたのにはもらい泣きしちゃったけど。

笑っていた。楽しかったねって。最高だったねって。それでも、またやりたいねと誰も言わないのは、もうできないことをわかっているからだ。


まだほかの部活が練習をしているグラウンドの端っこで、お菓子とジュースをあけた。みんなで乾杯した。いろんな人と写真を撮った。ぜんぜんしゃべったことのない応援団や野球部の後輩とも話したりした。

ひと段落ついたところで日陰に入り、オレンジジュースを飲んでいると、すぐに駆け寄ってくる人影があった。


「お疲れさまです!」


まだ目元がほんのり赤い朔也くんが屈託なく笑う。


「お疲れさま」


今朝もこうして顔を見て話したのに、試合中もずっと見ていたはずなのに、なんだかものすごく久しぶりに会った気分。


「ユニフォームどろどろだね」


からかうように言うと、朔也くんは目線を体に落としてちょっとはにかんだ。でもどこか誇らしげな顔にも見える。


「最後、いい特攻だったよ」

「死ぬ気で走ったんですけど、間に合わなかったです」

「足は大丈夫だった?」

「はいっ。あのときはアドレナリンどばどばで。いまも実はぜんぜんなんですけど……もしかしたら家帰ったとたん死ぬかも」


おどけて言いつつ、朔也くんがお尻のポケットをゴソゴソとあさる。


「でも、これ、右側に持ってたんで。大丈夫かなって」


ひょっこり姿を現したのは、改めて見るのも恥ずかしいほどぶさいくなお守りだった。


「試合中たくさん元気もらってました。打席に立つ前とか、ピンチのときとか何回もさわって。なんか、光乃さんに『大丈夫』って言ってもらえるみたいで、すげー心強くて」


もともと出来のよくなかったお守りは、激戦を闘いぬいたおかげでもっとボロボロになってしまっていた。でもそれがうれしかった。わたしも、いっしょに闘わせてもらえていたんだね。

やっぱりスポーツの傍にいたい。スポーツを愛している人の傍にいたい。強く強く思う。