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野球部は先に球場へ行ってしまい、あまりにも早く来てしまったわたしは着替えを済ませ、女子更衣室でみんなを待っていた。誰もいない朝の更衣室はおかしな空間だった。ほんのり休日の香りがする。夏休みの学校は、特別な感じがする。

出入口と反対側にある窓を開ければグラウンドが広く見渡せた。突き抜けるような青の下を、サッカー部と陸上部、ハンドボール部がシェアしている。

あそことここはまるで別の空気が流れているようだ。
スポーツをする人間は、しない人間よりも好きだなと思う。がむしゃらを楽しんでいる姿はなによりも素敵だ。わたしは、するより、見るほうが好きなんだけど。特に野球は俄然そうだな。

スポーツの傍にいたいと思った。

がんばっている人を近くで見ていたい。できれば、なにか力になりたい。

いろいろある。指導者やトレーナー、スポーツ用品のメーカーと販売、スポーツの情報を扱う記者。整形外科のドクターもそう。

だけどそういうことをしたいんじゃないな。どれもピンとこない。わたしは、おにいみたいな選手を、受け止め、支え、立ちなおれるまでいっしょにがんばる人になりたい。

ひとつの職業がぽんと浮かんだ。


「あ、はりきって早く来てる子がいるー」


とつぜん明るい声がして、振り向くと、和穂と雪美ともみじがなだれこむように入ってくるところだった。


「ていうか髪黒くない?」


視線をアタマから外さないまま、和穂が怪訝そうに言う。


「ウワ、ほんとだ。光乃が黒いのはじめて見た」

「見慣れないけど茶色より似合ってるね」


もみじと雪美もそれぞれ言った。


「いきなりどうしたの? なんかあった?」

「んー。あと半年で卒業だから、最後くらいイイコでいようかと思って」

「それゴンゾーが聞いたらぜったい嫌な顔するよ」


しゃべりながら着替えを済ませた和穂が、ポニーテールをするためにわたしの髪に手を伸ばした。別の人みたいだと笑いながら言われる。

黒いポニーテールは新鮮な出来栄えだった。青いリボンと青いユニフォームに、重たい漆黒は想像以上によくなじんだ。