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朝からピーカンだった。決勝日和。機嫌のよい太陽の下で退屈そうにしている高校球児は、わたしが現れるとオハヨウと言いかけて、そのままフリーズした。


「オハヨ」


仕方がないのでかわりに言ってやる。


「どうしたんだよ? そのアタマ……」


涼は、挨拶の返事はしないで、戸惑いの表情のままそう言った。


「こっちのが似合うでしょ」

「マッキンキンじゃない光乃なんて光乃じゃねー」

「だからわたしのはマッチャッチャだってば」


きのう、夕食前に帰宅するなり、風呂場に直行して髪を黒く染めた。ドラッグストアで買った安いヘアカラーは、鼻につくようなキツイにおいで、頭皮にじんじんしみて、サイアクだった。

仕上がりもサイアク。もともとの真っ黒よりも漆黒に染まった髪をはじめて鏡で見たときは泣きそうになったよ。

でも、似合わない茶色より、ずっと好きだと思った。おとといまでのわたしならきっとそんなふうには思わなかっただろう。


「ヤンキーやめんの?」


とぼけた口調で聞かれる。冗談か、そうじゃないのか、やっぱりよくわかんないやつだな。


「うん。やめる」

「うお。やっぱヤンキーだったのか」


しれっと答えて歩きだしたわたしに、涼はクックと笑いながらついてきた。どんどん高く昇っていく太陽に向かって歩く。新しい朝は、いつだってまぶしい。否応なく心が洗い流されてゆく。

だから、朝に会いたかったんだ。まっさらな新しい気持ちで会いたかった。

学校までいっしょに行こうと誘ったのはわたしのほうだ。中間地点で待ち合わせしようと言ったのに、涼はわざわざ遠まわりして、ウチの近くまで来てくれた。


こんなふうにいっしょに学校へ行くのってはじめてかもしれない。入学当初からそれなりに仲良かったから不思議な感じがしたけど、涼は朝早くから部活で、わたしはぎりぎりに登校するわけで、よく考えれば当たり前だった。

夏休み明けにはもう涼は引退しているから、ゆっくり登校するようになるのかな。そしたら朝の通学路で会うことも増えるのだろうか。そのときわたしたちは、オハヨって、笑って言いあってるんだろうか。


「ねえ、涼。こないだの返事……なんだけど」


ずっと友達でいたい。

ちゃらんぽらんだけど、ふにゃふにゃしてるけど、クラゲみたいな男だけど、そういうところが、すっごく好きだから。