ウチのセカンドも、ショートも、野球は抜群に上手い。いつものようなコミュニケーションはないものの、ふたりとも動きはよかったし、ミスをすることだってなかった。

それにヒビが入ったのが4回のウラ、1-0でリードしていた守備の場面だ。

ツーアウト二三塁というピンチに、涼と朔也くんはお見合いをした。お互いにセカンドベースに向かって転がってくる白球に突っこんでいき、相手に気づいたふたりともが足を止めてしまったのだ。

内野が処理するであろうと踏んでいたセンターのカバーは間に合わず、ランナーはそのままどちらも帰ってきてしまった。

1-2、逆転。三塁側スタンドは、静まり返った。


「さっくん、きのう、聞いてたのかもしれないよね、藤本の告白」


和穂がグラウンドに目を向けたままぽつんと言った。


「光乃たちを追いかけていったあとすぐ、ほんとにものすごいダッシュで帰ってきたんだよ。うわーって感じで」

「そうなんだ……。やっぱり気まずいって思われてんのかな」


何度もリピートしているあの場面が脳裏をよぎった。おもいきり目を逸らされたこと、たぶんけっこう尾を引いている。


「気まずいっていうか、ふつうにショックなんじゃん?」


眉根を寄せた和穂につられて、わたしも同じ顔になってしまう。


「さっくんってすごい、藤本になついてるし。藤本もめちゃめちゃかわいがってるし。大好きで尊敬してる先輩と同じ女を取りあうってなったら、そりゃショックだろうし、なかなかキツイと思うよ」

「うわ。もう、またそんなこと言う……」


ついに逆転されちゃったというのにのんきなやつだな。


「えー、わたしはほんとにそう思うけどな。光乃が藤本への返事を悩んでるのも同じ理由だと思ってるけど」


スタンド前方で応援しているマネージャーの横顔が見えた。不安でいっぱいの顔、とても切ない顔に、胸が締めつけられるような思いがした。

朔也くんがいま動揺しているのはきっと、柚ちゃんに告白されたからだ。

なんて、答えるんだろう。それとももうすでに返事をしたのかな。

優しい男の子だと思う。まっすぐな男の子だと思う。
そんな朔也くんをとても好きな柚ちゃんの手を、彼がそっと取ってくれたらいい。そうしたら、わたしだって涼への返事を迷ったりしないのかもしれない。