頭ひとつぶん身長の低い後輩は、緊張しているのか、あんまりぎこちなく歩くので、それが伝わってきてコッチまでおかしな動きになってしまう。

チャリ通学の野球部員たちに追い抜かれながら、わたしたちはひたすら黙って歩いた。


挨拶をしてくれたのは春日や市川で、いつもなにかとうるさい涼はきょうはなにも言わないで去っていった。視線すら、こっちに向けない。
肩甲骨の線が浮いている背中が普段とはぜんぜん違っているように思えて、ずっとは見ていられなかった。

そのあとですぐ、同級生の部員たちと帰宅していく朔也くんにも追い抜かれた。彼も振り返らなかった。さっき、グラウンドで、おもいきり目を逸らされたことを思い出した。


そこでやっと、柚ちゃんが口を開いた。


「わたし……倉田くんに告白しました」


本当に唐突だった。


「勢いだったんです。今朝、部活に向かう途中で偶然会ったんですけど。おとといの放課後のことが気になって、どうしても気になって、勇気ふりしぼって聞いてみました。『光乃先輩とつきあってるの?』って」


か細く震えている声に耳をすますために歩みを止める。隣を歩いていたローファーが、少し遅れてぴたりと止まった。


「つきあってないって、言われました。それでわたし、あんまり安心して、心が緩んじゃって、つい、ほんとについ、勢いで、『好き』って」


中学1年生のときからずっと朔也くんを好きだったということ、柚ちゃんは泣きそうな顔で告白してくれた。

幼いころから人見知りで、どうしてもオドオドしてしまうせいで、小学校のころは男子にからかわれがちだったのだと。そしていつしか他人を恐ろしいとさえ思うようになってしまった柚ちゃんを、世界とつなげてくれたのが、倉田朔也くんだったという。


「倉田くんを通じていろんな人と関われるようになりました。こんなわたしにいっぱい話しかけてくれて。みんなと同じように、ふつうに接してくれて。話すのがへたくそなわたしの言葉をいつだって待ってくれる倉田くんは、ずっと、わたしのヒーローでした」