⚾ ゜*。+
4回戦は県下最大の球場でおこなわれたにもかかわらず超満員だった。
準決勝より、決勝より、この準々決勝がおもしろいと言う高校野球ファンはけっこう多い。くわえてそれが土曜日にかぶったりするとなおさら混みあってしまうというわけだ。
和穂とはしゃべらないままだ。あきらかに無視されているのがわかって、なんと切り出せばいいのかわからなくて。
雪美やもみじの心配が申し訳なかった。情けなくもあった。でも……。
背筋を伸ばしてグラウンドのほうを向いている背中に話しかけようか悩んでいたところに、とつぜんスカートの裾をちょいちょいと引っぱられた。
「ウサギのおねえちゃんっ」
いきなり飛びこんできたのは、太陽よりもまぶしいくらいの笑顔。
「わ、ねねちゃんっ」
「おにいちゃんのシアイみにきたよ!」
『試合を見に来る?』と、きのう朔也くんが聞いていたことはもちろん知っている。それにねねちゃんがうなずいたことも。
ノートとペンを貸しだしたのはわたしだ。球場名とプレイボール時刻を書いたメモを、お父さんとお母さんに渡すようにと持たせた朔也くんは、これまでにないくらいうれしそうだった。
大きな荷物をやっと下ろすことができたような、荷物の中身をはじめて抱きしめられたような、そういう安堵に満ちた表情がすごく印象的だった。
ひとり?と聞こうとしたところに、ちょうどうしろからご両親らしき男女が駆け寄ってくる。お父さんの腕には幼稚園児くらいの女の子が抱かれていた。訊ねると、妹なんだと姉は誇らしげな顔で教えてくれた。
とてもあたたかい雰囲気をまとった、物腰のやわらかいご両親だ。こんな素敵なご夫婦が娘を失うことにならなくてよかったと、心から思った。
4回戦は県下最大の球場でおこなわれたにもかかわらず超満員だった。
準決勝より、決勝より、この準々決勝がおもしろいと言う高校野球ファンはけっこう多い。くわえてそれが土曜日にかぶったりするとなおさら混みあってしまうというわけだ。
和穂とはしゃべらないままだ。あきらかに無視されているのがわかって、なんと切り出せばいいのかわからなくて。
雪美やもみじの心配が申し訳なかった。情けなくもあった。でも……。
背筋を伸ばしてグラウンドのほうを向いている背中に話しかけようか悩んでいたところに、とつぜんスカートの裾をちょいちょいと引っぱられた。
「ウサギのおねえちゃんっ」
いきなり飛びこんできたのは、太陽よりもまぶしいくらいの笑顔。
「わ、ねねちゃんっ」
「おにいちゃんのシアイみにきたよ!」
『試合を見に来る?』と、きのう朔也くんが聞いていたことはもちろん知っている。それにねねちゃんがうなずいたことも。
ノートとペンを貸しだしたのはわたしだ。球場名とプレイボール時刻を書いたメモを、お父さんとお母さんに渡すようにと持たせた朔也くんは、これまでにないくらいうれしそうだった。
大きな荷物をやっと下ろすことができたような、荷物の中身をはじめて抱きしめられたような、そういう安堵に満ちた表情がすごく印象的だった。
ひとり?と聞こうとしたところに、ちょうどうしろからご両親らしき男女が駆け寄ってくる。お父さんの腕には幼稚園児くらいの女の子が抱かれていた。訊ねると、妹なんだと姉は誇らしげな顔で教えてくれた。
とてもあたたかい雰囲気をまとった、物腰のやわらかいご両親だ。こんな素敵なご夫婦が娘を失うことにならなくてよかったと、心から思った。