ひどいむくれっつらのまま、ひどい姿勢で自分の席に座っていた。
あしたからの休暇に心躍らせているクラスメートたちが、全員違う世界の人間に見えた。なんか、みんな、敵みたいに見えた。

わたしはなにをすねているんだろう。なにがこんなに気に入らないんだろう。

かっこわる。最低。わかっている。

でもダメなんだ。もやもやしている気持ち、どうにも上手くコントロールできないよ。



「ウワッ、ひでえ顔だな」


すでに誰もいなくなった教室に手ぶらで戻ってきたゴンちゃんが、わざわざわたしの顔を覗きこみながら言った。むくれたまま視線を上げる。そしてにらむ。ゴンちゃんはバカにしたように鼻で笑った。

最高にむかつく!


「持ってこれる仕事見つからなかったから、ちょっと来いよ」

「ハァ? ないならもういいじゃん」

「よくねえの。休み前のいちばんデカイ仕事が残ってんだよ」


また、一方的に言って教室を出ていく。今度ばかりは無視して帰ってやろうかと思ったけど、振り返りもしないその背中が無性に腹立たしくて、同じくらいドスドスと大きな音を立てながらうしろを歩いた。

つれていかれたのは北舎1階の端っこにある生物室だった。


「掃除するぞ」


心の底から面倒くさそうにゴンちゃんは言った。その心の底から面倒だと思っていることを、かわいい生徒にやらせようというのか。


「ぜったい手伝わない」

「やるんだよ」


使い古したようなボロ雑巾をポイっと投げられる。いろんな薬品のにおいが鼻をつく。

そろそろ本気でゴンちゃんのこと嫌いになりそうだと思った。わたしにいろいろと指示を出して、自分は窓際で優雅に煙草を吸っていやがるんだ。勤務中なのに。チクってやろうかな。それとも放課後は勤務外になるんだっけ?

そういえば、ゴンちゃんが喫煙者だということ、はじめて知った。