「なんか……相良くんのほうが、だいぶ先を歩いてるっていうか……すでにもう三年の教科書をやってるみたいな感じがする」
「ハハ。なにその優等生みたいなたとえ」
「ちょっと悔しい」
 
正直にそう言うと、
「でもたしかに、折れたら俺みたいに自暴自棄になるかもなーなんて思ってたら、ハハ、案の定たやすく折れて、落ち込んで。間近で復習できたし自分を省みることができたかな」
と、腕を組んだまま顎を上げて言われ、
「ひどいね」
と仏頂面を返す。

「感謝してるってことだよ。ウサギがターニングポイントになったから」
 
冷たい風が全開にした窓からまた吹き込み、相良くんは片目を瞑って「てか、さみぃ」と窓を閉めた。
外の音が遮断されて、ゆっくりと音楽室に静寂が戻ってくる。