そう言って、星岡君は私の腕を引いて、私のことをぎゅっと優しく抱きしめた。

彼の手は震えていた。

私は、これが現実なのかなんなのか分からないくらい、ふわふわした気持ちのまま、星岡君の言葉をひたすら聞いていた。


「なんでこんなに人の幸せばっかり願うんだよ、望月は……っ」


私が、あなたの幸せ、というテーマで描いた絵は、来栖先輩の笑顔だった。

それは、星岡君の幸せを願って、描いた絵だった。

最初は罪滅ぼしのように描いていた。けれどだんだん、そうじゃなくなった。

私は心の底から、来栖先輩とうまくいけばいいと、そう思い始めていたんだ。


だって、星岡君のあんな涙を見てしまったら、そう思わずにはいられなかったから。


「だって、私、私が雛ちゃんと会えたかもしれないのに、私が借りたからっ……」

今まで封印していた言葉が、順序も何もかもめちゃめちゃになって口から出てくる、止まらない。


「違うよ、翠も言ったと思うけど、そんなの望月の責任じゃない。罪悪感なんて抱かないくていいんだ」

「だって私見ちゃったんだもん、この教室で、ひとりで泣いている星岡君のこと……っ」

「なんでそれで望月が自分を責めるんだよ……」

「だって、私、星岡君のことを好きになっちゃったんだもん……、好きな人に泣かれたら、悲しいもん……っ」