きっといつか、誰かを好きになって結婚しても、きっとまた思い出す。

君とこの校舎で一緒に過ごしたこと。

一緒にお昼ご飯を食べたこと。

くだらないことで笑い合ったこと。

時には、自分の弱い部分を見せて泣いたこと。


その全てが、宝石のようにキラキラ輝いた思い出になるはずだから。



私は、涙を拭いながら、美術室へと向かった。

……あの絵を回収しに行こう。私の初恋の全てをかけて、描いた絵を。

これがきっと、きれいなエンディングになるよね。


「え……」

ガラッと扉を開けると、一年生の春に見た光景と全く同じ光景が広がっていた。

ひとり、美術室で涙を流している男子生徒が、そこにいた。

彼はキャンバスの前で、静かに涙を流していた。