「ありがとう一之瀬君、毎日電話は困るけど、こっちに来てくれるの楽しみにしてるね」

「やっぱり困るんかい」

「はは、受験お互い頑張ろうね」

我慢できなくなった三木ちゃんが私と一之瀬君を無理やり引きはがすまで、クラスの皆は笑っていた。

一之瀬君の目が、少しうるうるしてることに気づいていたけれど、私は気づかないふりをした。きっといじったら恥ずかしがるだろうから。


「本当に嬉しいな、企画してくれてありがとう、三木ちゃん……」

改めて皆にもらった色紙を見ると、ひとつだけ空枠があることに気づいた。

そこは、星岡君のスペースだった。

そういえば、星岡君がさっきから見当たらない。

もしかして、もう部活に行ってしまったんだろうか……それとも、私に会いたくなかったのだろうか。

そんなことを疑問に思ったが、それを表に出さないように、皆との最後のお別れ会を楽しんだ。