泣いて抱き着いてくる三木ちゃんの背中を撫でていると、少し離れたところにいた一之瀬君とばちっと目が合った。

すると、一之瀬君はスタスタとこちらに近づいてきて、何をするかと思えば三木ちゃんごと私たちを抱擁した。


「ギャー! なんなの一之瀬気持ち悪い!」

三木ちゃんが私と一之瀬君の間で騒いでいたが、クラスの皆は嫌がる三木ちゃんを見て笑っていた。

そんな周囲のことなんて気にせずに、一之瀬君は私のことをぎゅっと抱き寄せて、囁いた。


「もっちー、すぐ東京まで追いかけるから、待ってて」

「あんた依の彼氏みたいなこと言わないでよ! あと離れて息苦しいっ」

「引っ越しても、毎日電話するからね」

「あんたふざけんじゃないわよ、依の受験の邪魔しないで!」


キーキー叫ぶ三木ちゃんを完全に無視して甘い言葉を言ってくる一之瀬君に、私は思わず笑ってしまった。

そんな私を見て、よかった笑顔が見られて、と本当に優しい表情で呟くので、迂闊にも照れた。