「自分の気持ちを押し殺し続けて、お前の背中を押して、やっと翔太から離れようとした望月に想いを伝えるか、伝えないか、それは全部翔太次第だ……」


……ああ、俺は、何も望月のこと分かっていなかったんだな。

情けなくて、涙も出ないよ。

君は、俺が知らない間に、一体どれだけひとりで傷ついてきたんだろう。

こんな俺が今更想いを伝えたら、望月はどう思うんだろうか。


望月が責任を感じることなんて一切ないよ。

そう言って抱きしめて、それで望月の心は軽くなるだろうか。

……きっと違う、望月は、きっと俺のことを見るたびに罪悪感を思い出す。


だったら、想いを伝えずに、その呪縛から解放してあげた方がいいのか……?


「どうしたら、いいんだよ……」

途方もない言葉が、乾いたグラウンドに響く。

一之瀬は、もう何も話さない。


……なあ雛、俺、お前にがっかりされないように生きるって決めたけど、今出口が見えないよ。

この気持ちは、お互い殺して、なかったことにするべきなのかな。


『……星岡君も、好きだよ』。


いつかの彼女が冗談めいて言った言葉が、頭をよぎる。

あの時君は、一体どんな気持ちで笑っていた?