「部活動、この高校では必須なのは聞いてると思うけど、どうする?」

職員室で、まだ若くてそこそこイケメンな、担任の桜木先生が面倒くさそうに問いかけた。

三木ちゃんのように調理部という名の帰宅部に所属しているような子もいるけれど、この学校は比較的部活動に熱心だ。

とりあえず適当に今週までに決めちゃってよ、という先生の気持ちが、『どうする?』の四文字に込められているのを感じ取った。

実を言うと、私はもう入りたい部活が決まっていたので、私はその場で即答した。

「美術部に入ります。今日見学に行きたいと思っていたので、場所教えてください」

そう言うと、先生はきっぱりとした私の態度に少し驚きの表情を見せたけれど、丁寧に場所を教えてくれた。


グラウンドの真上にある渡り廊下を渡って、突き当りを右に曲がったところに美術室がある。

その情報をもって、私は校内を散策してた。

ほぼガラス張りの渡り廊下からは、グラウンドで元気にサッカーや野球をしている生徒たちの様子がよく見える。

とくにサッカーは、全国大会に行くことが当たり前と言われているほどの強豪校だと事前に聞いていた。

渡り廊下で立ち止まり、食い入るように辛そうな練習を見ていると、野球部の活動場所がある方向から、やけに大きな声が聞こえてきた。

危ない、その声がはっきりと聞こえた瞬間、ガラスの目の前まで硬球が迫っていた。

「え……」

時が、止まった気がした。

一瞬頭の中が真っ白になって、その場から動くことができなくなってしまった。

鈍い衝撃音が聞こえて、足元には氷を砕いたようなガラスの破片が少しだけ散らばっている。

恐る恐る窓を見上げると、硬球は編入りガラスに食い込んでそこで止まっていた。

でも、それ以上に驚くべきことが、私の身に起こっていた。