「へぇ、俺もついていこうかな」

「えっ」

「冗談だよ」


つい真に受けてしまい驚きの声を上げると、星岡君はすぐにそれを訂正した。

また、冗談を真に受けてしまった……。

恥ずかしくなって目をそらしたが、それでも私服姿の星岡君にドキドキしてしまい、休日に会えたことに舞い上がってしまった。

星岡君は、お墓参り用の黄色いお花を持っていて、それが歩くたびに揺れる。

綺麗に舗装されていない、雨に濡れた道路を、二人で傘をさして並んで歩いていると、影の大きさが違うだけで心臓がきゅんと苦しくなった。


「じゃあ、ここで」

星岡君と一緒にいたら、あっという間に駅についてしまった。

私は少し寂しく感じながらも、手を振って同じように別れのあいさつを返した。

「またね、星岡君」

ゆっくりと前を向き直り、私は電気屋へと向かう。

星岡君も、同じように元来た道を戻っていく。

……なんとなく少し気になって振り返ってみると、星岡君はさっき通ってきた道とは違う道を通って歩き出していた。

なんだろう、何かが引っ掛かる……。

そう思って、彼の言葉を辿ってみる。


『俺は、墓参りに行った帰りで……』。


お墓参りに行った帰りだと言っていたのに、彼は手に花束を持っていたのはなぜ?

もしかして、花を手向けずに、引き返してきた帰りだったのだろうか……。


『送るよ、昼だけど』。

『俺もついていこうかな』。


思い違いかもしれないけれど、彼の言葉少なな発言から、ひとりになりたくないという感情が浮かんで見えてきた。

もしかして、あのお花は翠さんの妹のため……?

色々と考えを巡らせれちるうちに、星岡君は見えなくなっていた。

どくんどくん、と心臓が、少しずつ音を速めていく。

私が追いかけたところで、何も変わらないけれど、ひとりでいたくないという願いなら、叶えてあげることはできる。


……星岡君は、私が困っているときに、いつでも助けてくれた。

その恩返しがしたい。ここで追いかけなかったら、きっと後悔する。

勇気出せ、私。


私はぐっと手に力を入れて、星岡君が消えていった田舎道に向かって走った。

想いを伝えることはできないけど、この行動はさらに自分を追い詰めることになるかもしれないけれど。


でも、あの雨に濡れた黄色い菊の花には、