予想もしていなかった回答に、私は言葉を失くしてしまった。

それと同時に、こんなことを興味本位で聞いてしまった自分を激しく責めた。

来栖先輩は、窓の外を見ながら、なんとも言えない表情でその時のことを思い出している。

一年前のあの日、血相を変えて教室に入ってきた来栖先輩の泣き腫らした表情が、鮮明によみがえってきた。

……そうか、だからあんなに泣いて、必死に走っていたんだ。

「ごめんなさい私、あの日役に立てなくて……」

とてつもない罪悪感に駆られて、私は気づいたら思っていることを口に出してしまった。

来栖先輩はもちろん眉を顰めて、なんのこと? と私のことを心配そうに見つめている。

「一年前、星岡君が誰か、まだ分かっていなくて……」

そこまで話すと、彼女はようやくなんのことを言っているのか気づいたのか、私の肩をさすってくれた。

「あの時教室にいた子、望月さんだったの? 私酷い顔してたでしょう、ごめんね」

ふるふると力強く首を横に振ったが、何を言っても来栖先輩に気を遣わせてしまうようで、不甲斐なかった。

来栖先輩は、あの日妹さんが事故に遭ったと聞いて、必死に星岡君を探していたんだろう。

来栖先輩と星岡君は幼馴染だと聞いていたから、きっと来栖先輩の妹も可愛がっていたんだろう。


「私の妹ね、翔太のことが大好きだったの。だから、咄嗟に翔太も連れて行かなきゃって思ってね。……結局すぐに連絡取れなくて、間に合わなかったんだけれど」

「そう、だったんですか……」

「そっか、翔太のクラスメイトなんだもんね。仲良くしてあげてね。当たり前だけど、望月さんは何も責任なんか感じなくていいからね」


来栖先輩は、そう言って明るくふるまって、また歩き始めた。

私は、そんな先輩の華奢な背中を見ながら、あの日自分が、星岡君と先輩を会わせてあげられなかったことを悔やんだ。

なぜなら、星岡君と、来栖先輩がすぐに連絡を取れなかった原因も、私にあるから。


私はあの日、スマホの電池が切れてしまい、ひとりで途方に暮れていたんだ。

スマホがないと、電車を調べることもできないし、まだ慣れていない家までの道のりを地図で追うこともできない。

充電器を持ってこなかった自分に呆れていたら、ジャージを着た男の子が、……当時の星岡君が、どうしたの? って話しかけてくれたんだ。