「……私ね、ずっとやってみたかったことがあるの」
「うん? なに」
私は、星岡君から少し離れて、彼を見上げて、そっと頬に指を添えた。
星岡君の濡れた頬を指で撫でて、涙を拭ったその瞬間、胸の中に温かいものが流れ込んできた。
ひとりで感動してまた泣きそうになっている私を見て、星岡君は心配そうにどうしたの? と聞いてきた。
私は、鼻をすすりながら、笑って答えた。
「二年前の春、ここでひとりで泣いている星岡君を見た時、涙を拭ってあげられなくてずっと後悔してたの」
「え……」
「だから、今叶えられて、よかった……」
そう言って笑う私を見て、星岡君はまたぽろっと涙をこぼしてしまった。
知らなかった、星岡君がこんなに泣き虫だったなんて。
「俺、絶対東京の大学受かるから。だから、待ってて」