彼女は目を丸くして固まって、暫くしてから、え、と声を上げた。
驚いたような、意外な反応をされたけれど、ちっとも意外ではないし、勘付いていてもいい頃合いだと思うんだけれど。

「葵はそういうこと決断するのにあと二十年はかかるかと思ってたけん……びっくりした」
「そういう意味での驚きだったわけか」

なんとも心外な発言をされ腹が立ったので、俺は萌音の頬を抓った。
すると、ちゃんと痛い、夢じゃない、なんてことをこの期に及んでまで言うので、怒ってたはずなのに思わず笑ってしまった。

「で、返事はどうなんですか」
頬から指を離して、萌音の目を見つめて問いかけると、萌音は俺の頬を同じように抓って、笑ってこう言った。

「夢じゃないので聞いてください」

少しだけ指先に力を込めて、萌音は俺の瞳をまっすぐ見つめる。

「末永く、よろしくお願いいたします」

なんだかかしこまってそんな話をするのがおかしくて、僕たちは笑った。


予知しなくても、新しい未来が、今この瞬間に、見えた気がした。