なぜすぐに四年前だと分かったかというと、萌音が大学の入学書類を持って、ばあちゃんのところに向かっていたからだ。
萌音は書類をばあちゃんに見せると、ばあちゃんは同じように喜んでくれていた。
「ばあちゃん、受かった! 女子美受かったよ!」
「よかったなぁ、本当によかったなあ」
「でも、私神奈川に移り住まなきゃいけん……ばあちゃんひとりになってしまうよ」
「そんなこと気にせんでええんよ。やりたいことやってくれるのがばあちゃんの幸せ」
おばあちゃんは少しも寂しい表情を見せずに、萌音にそう言った。
萌音は少し迷ったような、嬉しいけど複雑だという表情をしていた。
「はよ物件見つけんと、いい部屋埋まっちゃうで」
そう言っておばあちゃんは萌音の背中を叩き、新生活のスタートを促した。
一緒に家具を買って、慣れない電気屋に行って、必要以上に調理器具を買って。
萌音は支払いについて常に心配していたが、これは萌音のための両親からの貯金だから気にせんでいいのよ、と言っている。
とにかく萌音よりおばあちゃんの方が張り切っている。本当にそんな感じだった。
予想とは全く違う、あまり泣けそうにない映像に、俺は拍子抜けしていた。
そして、そんなこんなであっという間に引っ越しの日が来た。
ばあちゃんは駅まで萌音を送って、一緒にホームまで来ている。
プラスチックのベンチに二人で座って、萌音を乗せていく電車を待っていた。
「ばあちゃん、本当にいいの……?」
最後の最後に、萌音がもう一度不安そうに聞いた。
ばあちゃんは、変わらぬ明るい笑顔で、大丈夫に決まってるけん、と笑った。
「あんなにお絵かき頑張ってたけん、行かんでなんて、言えんとよ」
「ちゃんとこまめに帰ってくるけんね。腰気を付けてよ」
「なにも心配することはなかよ。ほら、電車きたけぇ」
ガタンガタン、という音を立てて、無情にも電車は予定時刻通りにやってきた。
萌音は荷物をもって、電車に乗った。
「ばあちゃん、本当にありがとう。私、ばあちゃんいなかったら生きていけんかったとよ。本当にありがとう!」
「最後の別れみたいに言わんでよ、またいつでも帰っておいで」
「うん、ありがとう」
萌音がありがとう、と最後に言った瞬間、電車のドアがぷしゅーっと音を立て閉まった。
ガタンガタン、と再び電車は動き始め、神奈川へと運んでいく。
萌音は書類をばあちゃんに見せると、ばあちゃんは同じように喜んでくれていた。
「ばあちゃん、受かった! 女子美受かったよ!」
「よかったなぁ、本当によかったなあ」
「でも、私神奈川に移り住まなきゃいけん……ばあちゃんひとりになってしまうよ」
「そんなこと気にせんでええんよ。やりたいことやってくれるのがばあちゃんの幸せ」
おばあちゃんは少しも寂しい表情を見せずに、萌音にそう言った。
萌音は少し迷ったような、嬉しいけど複雑だという表情をしていた。
「はよ物件見つけんと、いい部屋埋まっちゃうで」
そう言っておばあちゃんは萌音の背中を叩き、新生活のスタートを促した。
一緒に家具を買って、慣れない電気屋に行って、必要以上に調理器具を買って。
萌音は支払いについて常に心配していたが、これは萌音のための両親からの貯金だから気にせんでいいのよ、と言っている。
とにかく萌音よりおばあちゃんの方が張り切っている。本当にそんな感じだった。
予想とは全く違う、あまり泣けそうにない映像に、俺は拍子抜けしていた。
そして、そんなこんなであっという間に引っ越しの日が来た。
ばあちゃんは駅まで萌音を送って、一緒にホームまで来ている。
プラスチックのベンチに二人で座って、萌音を乗せていく電車を待っていた。
「ばあちゃん、本当にいいの……?」
最後の最後に、萌音がもう一度不安そうに聞いた。
ばあちゃんは、変わらぬ明るい笑顔で、大丈夫に決まってるけん、と笑った。
「あんなにお絵かき頑張ってたけん、行かんでなんて、言えんとよ」
「ちゃんとこまめに帰ってくるけんね。腰気を付けてよ」
「なにも心配することはなかよ。ほら、電車きたけぇ」
ガタンガタン、という音を立てて、無情にも電車は予定時刻通りにやってきた。
萌音は荷物をもって、電車に乗った。
「ばあちゃん、本当にありがとう。私、ばあちゃんいなかったら生きていけんかったとよ。本当にありがとう!」
「最後の別れみたいに言わんでよ、またいつでも帰っておいで」
「うん、ありがとう」
萌音がありがとう、と最後に言った瞬間、電車のドアがぷしゅーっと音を立て閉まった。
ガタンガタン、と再び電車は動き始め、神奈川へと運んでいく。