だけど今は、おばあちゃんの健康が最優先だ。
「ああそうだ、萌音、ばあちゃん雨ほしいけ。買ってきてくれる?」
ばあちゃんのお願いに、萌音はすぐさまお財布をもって部屋を出て、戻ってきて何味がいい? と聞いてから再び部屋を出た・
その様子を見て、おばあちゃんが、騒がしい子やね相変わらず、と言って笑った。
俺は苦笑して、そこがいいですけどね、と答えた。
「こっち座り、あお君」
おばあちゃんは丸椅子を指さして誘導したので、俺はおばあちゃんの近くに椅子を持っていき座った。
こうやっておばあちゃんとふたりきりになるのは、結構久しぶりかもしれない。
「耳は最近どうなの?」
「お陰様で。最近は聞こえも安定しています」
「そう、よかった」
おばあちゃんが本当に安心したように笑ってくれたので、俺も嬉しくなった。
おばあちゃんの作り出す空気は不思議だ。
あったかくて、優しくて、少し泣きたくなる。
萌音があんなにのびのび育った理由が、分かる気がする。
「あお君は、ちっとも方言うつんないねぇ」
「そうですね、両親ともに標準語を喋っていたので」
「ああ、そうだったねぇ、確か」
俺の母親のことを思い出したのか、おばあちゃんは少しだけ目を細めた。
俺は、自分の家族とはいまだに一切連絡を取っていない。
晴のコンテストを観に行ったときが、自分の中で勝手に最後だと決めた時だった。
萌音が母親をビンタしたときは、正直かなりすっきりしたのを覚えている。
これ以上会って会わなくても俺は変わらないけれど、晴はきっと俺に会うたびに卑屈になるだろう。
ピアノの技量はとっくに抜かされているし、俺はすぐ気持ちを乗せて弾いてしまうところがあるから、正確さでは晴には勝てない。
でもそんなこと本人は気付いていないし、言ってもいない。
「ご両親には、会わなくていいんかい?」
おばあちゃんの問いかけに、俺は苦笑して曖昧な返事をすることしかできなかった。
正直、自ら会うつもりは全くない。
「……あお君は、ご両親を恨んでるかい?」
「恨んでる……ですか。どうでしょうね……」
幼いことは絶対に許さないと思っていたけれど、大人になって少し鎮火した今では、恨むという言葉は強すぎる気もする。
だけど親に対して好意的な気持ちは一切ないし、何か助けを求められても助けようとは思わない。
「ああそうだ、萌音、ばあちゃん雨ほしいけ。買ってきてくれる?」
ばあちゃんのお願いに、萌音はすぐさまお財布をもって部屋を出て、戻ってきて何味がいい? と聞いてから再び部屋を出た・
その様子を見て、おばあちゃんが、騒がしい子やね相変わらず、と言って笑った。
俺は苦笑して、そこがいいですけどね、と答えた。
「こっち座り、あお君」
おばあちゃんは丸椅子を指さして誘導したので、俺はおばあちゃんの近くに椅子を持っていき座った。
こうやっておばあちゃんとふたりきりになるのは、結構久しぶりかもしれない。
「耳は最近どうなの?」
「お陰様で。最近は聞こえも安定しています」
「そう、よかった」
おばあちゃんが本当に安心したように笑ってくれたので、俺も嬉しくなった。
おばあちゃんの作り出す空気は不思議だ。
あったかくて、優しくて、少し泣きたくなる。
萌音があんなにのびのび育った理由が、分かる気がする。
「あお君は、ちっとも方言うつんないねぇ」
「そうですね、両親ともに標準語を喋っていたので」
「ああ、そうだったねぇ、確か」
俺の母親のことを思い出したのか、おばあちゃんは少しだけ目を細めた。
俺は、自分の家族とはいまだに一切連絡を取っていない。
晴のコンテストを観に行ったときが、自分の中で勝手に最後だと決めた時だった。
萌音が母親をビンタしたときは、正直かなりすっきりしたのを覚えている。
これ以上会って会わなくても俺は変わらないけれど、晴はきっと俺に会うたびに卑屈になるだろう。
ピアノの技量はとっくに抜かされているし、俺はすぐ気持ちを乗せて弾いてしまうところがあるから、正確さでは晴には勝てない。
でもそんなこと本人は気付いていないし、言ってもいない。
「ご両親には、会わなくていいんかい?」
おばあちゃんの問いかけに、俺は苦笑して曖昧な返事をすることしかできなかった。
正直、自ら会うつもりは全くない。
「……あお君は、ご両親を恨んでるかい?」
「恨んでる……ですか。どうでしょうね……」
幼いことは絶対に許さないと思っていたけれど、大人になって少し鎮火した今では、恨むという言葉は強すぎる気もする。
だけど親に対して好意的な気持ちは一切ないし、何か助けを求められても助けようとは思わない。