紺色のパーカーが、腹部からじわりじわりと赤黒く染まっていく。
嘘だと思いたかった。でもこれが真実だった。葵は、私が葵の能力を悪用したせいで、刺されたのだ。
そうか、私が全ての原因だったのか。私が葵をこんな運命にさせてしまったのか。
辛すぎる事実に、私は気を失いかけたが、でもしっかりとこの目で見なければならないと思った。真実と向き合うことでしか、罪を償えないと思ったから。
葵は、腹部から血を滲ませながら、下田講師よりもずっと低い声で忠告した。

「萌音がお前を不幸にしなかったら、俺がお前を殺してた。俺が殺人犯にならずに済んだのは、萌音のお陰なんだ……」

掠れた声でそう言って、葵はコンクリートの上に倒れ込んだ。
映像は、そこで一度途切れて終わった。

……目を開けると、汗でぐっしょり濡れたまま、私は畳の上に倒れ込んでいた。
想像以上にヘビーすぎる事実に体力を使い切ってしまって、体がすぐに動かせない。
違う、こんなところで倒れている場合じゃない。
続きを見るんだ。葵の居場所が分かる過去までしっかりこの目で見届けるんだ。
私は、畳に倒れ込んだまま、もう一度手紙を額につけて、センター試験後の日を思い浮かべた。
正直、もうこの続きを見たくない。心からそう思っている。
でも、傷ついても、辛くても、それでも私は葵に会いたい。会いたいんだ。
そう強く願った瞬間、再び頭の中の映像が湾曲した。

真っ白な部屋だ。何もない。
あ、この香り……さっき嗅いだばかりのような気がする。ああ、そうか、ここは病院か。
徐々にチャンネルが合っていくのを感じて、ようやく視界がハッキリした。
そこには、酸素マスクをしたまま眠っている葵がいた。
ピッピッピッピ、という機械音が部屋に響き、一定のリズムで葵の血管に薬が入っていく。
葵の弱り切った姿に、私は再び目を背けたくなったが、部屋に誰かが入ってきた。

「……そうですか、彼が葵君ですか。案内ありがとうございます」
それは、全く見覚えのないおじさんだった。
髪は綺麗な白髪で、四角い黒縁眼鏡をかけた、上品な印象のおじさんだ。
彼は、ナースにぺこっと頭を下げてから、葵のそばに座った。
それから、両膝の上に拳を乗せて、勢いよく頭を下げた。
「すまない、葵君……私の生徒が取り返しのつかないことをしてしまって……」