「俺の名前は、“ユイ”。特進科の二年でタメだから、そのうっとうしい敬語もいらない」

「ユイ……」

「うん」


それだけを名乗った彼の髪を、迷いこんできた風が優しく揺らした。

数回まばたきを繰り返すと、私の前まで歩いてきた彼が、そっと自分の左手を差し出す。


「それじゃあ、これからよろしく── ナナ」


“ ナナ ”


こうして始まった、ユイと私の秘密の時間。

息苦しい世界から切り離されたこの場所で結ばれた……私たちだけの、秘密の約束。