「どうする?」


どうする、なんて。

私がなんと答えるのかも、わかっているくせに。


「……わかりました。そのワガママを受け入れたら、全部なかったことにしてくれるんですよね?」


ふたたび胸の前でギュッと両手を握りしめ、彼のことをまっすぐに見つめた。

そうすれば、どこか儚げに微笑んだ彼の笑顔に、一瞬だけ息をのむ。


「ワガママ、か」

「あの……」

「いいよ。もちろん、二ヶ月半後には、全部なかったことにする。この約束だけは、ぜったいに守るから……安心して」

「それじゃあ……」

「交渉成立。……それで、君の名前は」

「ナナミです……。普通科二年、逢坂七海……」

「ナナ、ミ……」


とても、とても不思議な彼。

彼の真意なんて、私にはサッパリわからない。

けれど私の言葉に、そっと目を細めた彼はやわらかな笑みを浮かべて私を見つめる。

おだやかな瞳はまっすぐに私をとらえ、離さない。

まるで、私の心の奥を見透かされているようで、胸の鼓動ばかりが速くなった。