「あ、あの。急に、なにを」

「だから、俺に黙っててほしいなら、それなりの代償を払ってもらわないと……ってことだよ」

「代償って……」


嘘でしょう?

つい今しがたの彼とは、まるで違う。

軽快な口調でとんでもないことを言いだすから、今度こそ言葉を失った。

絶望の表情を浮かべているであろう私を見ておもしろそうに笑う彼には、先ほどまでの儚げな雰囲気は少しも感じられない。

会ったばかりの彼に、なにもかもを打ち明けた私がバカなだけなんだけど。

でも、彼からもらった『君のピアノが好き』という言葉に、つい気持ちがほだされて──。