「それでも俺は、君のピアノが好きだよ」

「……っ」


その温度と言葉にはじかれたように彼を見れば、彼は木漏れ日のようにやわらかな笑みを浮かべて、私のことを見つめていた。

……彼は、なにを言っているんだろう。

一体、なにを言っているの?

ふたたび高鳴りだす心臓と、締めつけられたように痛む胸。


──本当の、自分じゃない。


もしかして、彼もなにか、自分ではどうしようもできないことを、かかえているのだろうか。

人には言えないような、なにか大きな痛みを、彼も──。